糖尿病とは
通常、血液中のブドウ糖は、インスリン(膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中の糖分を組織に取り込ませ、血糖値を下げる働きをしている)の作用によって細胞に取り込まれてエネルギー源になったり、あるいは脂肪やグリコーゲンという物質に変換されて肝臓や筋肉に蓄えられたりします。
しかし、何らかの理由で血液中のブドウ糖が細胞にうまく取り込めなくなり、血液中にブドウ糖が濃くなってしまったような状態が糖尿病です。長期にわたり血液中のブドウ糖の過剰な状態が続くと、全身の血管に様々な問題が現れ、糖尿病による合併症、すなわち糖尿病細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)などを引き起してきます。
糖尿病網膜症とは
糖尿病の三大合併症の一つとして知られ、腎症、神経障害と並び称され、失明につながる恐ろしい病気です。
働き盛りの年代を襲う糖尿病網膜症は中途失明することもあり、たいへん厄介です。
糖尿病に罹っている期間が長ければ長いほど発症率も上昇し、血糖コントロールの良くない状態が長期間(5~10年程度)に及ぶと、多くの場合、網膜をはじめとする目の組織にいろいろな症状が生じてきます。
目に特別な異常が感じられない場合でも、半年から1年ごとに眼科を受診してください。
糖尿病網膜症の検査
問診・視診をした後で、下記のような検査を行うのが一般的です。
視力検査
視力の低下をいち早く発見できる検査です。
眼底検査
目の奥に光をあてて網膜を直接観察し、網膜やその血管の状態を調べます。
蛍光眼底造影検査
腕の静脈から蛍光色素の入った造影剤を注入しながら眼底カメラで目の奥の血管を観察し、血管の形状や血液の流れ、網膜の血管からの血液成分のもれ具合などを調べます。
OCTアンギオ検査
眼底に近赤外線を当て、その反射波を解析して、層構造をした網膜の断層像を描出し、網膜の状態を調べます。
病期に応じた糖尿病網膜症の治療
糖尿病網膜症の病期は、「単純」「増殖前」「増殖」にそれぞれ分けられ、治療法もこの病期に対応して変化してきます。
また、視力低下を引き起こす「糖尿病黄斑浮腫」はすべての病期で起こることがあります。
単純糖尿病網膜症(初期の網膜症)
症状としては、小さな眼底出血や白斑が見られますが、自覚症状はありません。治療の必要は無いものの、定期的な経過観察が必要です。3ヶ月に1回程度受診しましょう。
増殖前糖尿病網膜症(中期の網膜症)
症状としては、小さな眼底出血に加えて、網膜における血液の流れが悪くなります。視力が低下しないことも多く、自覚症状が無い場合もあります。
放置すると増殖網膜症に進行しやすいため、血流不足による酸素・栄養不足に陥った網膜に対してレーザー治療(網膜光凝固術)を行う必要があります。1ヶ月に1回程度の受診を要します。
増殖糖尿病網膜症(進行期の網膜症)
眼内に硝子体出血や増殖膜という線維膜が生じて、牽引性網膜剥離など、様々な病態が引き起こされます。
治療としては、レーザー治療(網膜光凝固術)はもちろん必要ですが、それでも進行を阻止できない場合は、硝子体手術が適応になります。